月霜の樹林

La bave du crapaud n'atteint pas la blanche colombe...

【小品】メイド戦隊!純情はぐれ旅 Prologue  

 「…は?」
 突然の申し出に、宿の亭主は皿を拭く手を止めて目の前の珍客を凝視した。

 此処は荒事宿『氷輪亭』。所謂荒くれ者が集う冒険者の宿だ。
 だが目の前に居るご一行様は、どう考えても場末のこの宿に足を運ぶ事など有り得ない階層の者達だった。


 ル=スワール子爵家。
 つい先頃、当主が亡くなり屋敷が人手に渡ったと言うリューンでも中の下程度の学者貴族。噂では新進気鋭の考古学者だった嫡男オレールが醜聞で学界を追われ、出奔してしまったのが原因だったとか…。
 「…兄様は決して不正を犯す様な事はしない!僕は兄様を信じています」
 亭主の心中を見抜いてか、まだあどけなさを残した少年が此方をきっ、と睨んだ。
 温厚篤実だった実兄が、他人の発見を横取りしたり成果を捏造したりするはずがない。
 そう固く信じた少年は事の真相を糾す為、兄の行方を追うべくお屋敷に残ったメイド達を引き連れて冒険者の宿『氷輪亭』に飛び込んで来たのだ。

 「僭越ながら、私どもも若様を信じております」
 傍らに控える白皙の女性――お屋敷の女中頭だと名乗った――が少年の言葉を静かに引き継いだ。
 「それにご当主様が亡くなられた以上、若様にはル=スワール家を継ぐ責務が御座います」
 それ故、何としても跡取りを探し出し人手に渡ったお屋敷を取り戻さなくてはならぬと有無を言わせぬ調子で話した。
 「大方、あの賤民あがりの権威気取りにでも嵌められたんでしょ。全くお人好しなんだから…」
 たおやかな風情の青髪の乙女が何処か棘のある微笑みを浮かべると、
 「あー!あのピヨピヨ頭の持ち眼鏡か。人のムネ触りやがったから薪で思いっ切りケツ叩いてやったよ!」
 大量の荷物――恐らくは全員分の――を背負った小柄な白金色の髪の少女が豪快に笑ってみせる。…察するに、失踪した嫡男は誰かの陰謀に巻き込まれてしまった様だ。
 「若様をお小さい時から見守って来ましたから、私もとても心配なのです」
 「私からもお願いします…、何かお役に立てるならば何でもお手伝いさせて頂きます…」
 後ろに控えていた赤毛の婦人と金髪の大人しそうな娘も口を揃えた。
 …さて、どうしたものか。宿の亭主は暫く思案に暮れた。

 暫く後。老舗の荒事宿『氷輪亭』に場違いな"冒険者"達が住み着いた、と下町界隈で噂になったそうだ。


メイド戦隊+おまけ


Cast画像:(C)竜想月


 …お待たせ致しました。突発企画『メイド戦隊!純情はぐれ旅』の始まりです。
 論敵の卑劣な陰謀により出奔を余儀なくされた兄の行方を追うべく、また当主の死後人手に渡ったお屋敷を奪還すべく、世間知らずの坊ちゃんと五人の凄腕メイド達による波瀾万丈のドタバタ冒険が始まります。全員のレベル上限を6とし所持金総額を10万sp(屋敷を買い戻す資金)とする事を目標にした無謀極まりないリプレイですが、ぼちぼち気楽にやって行きたいと思います。
 なお本リプレイでは現在入手不能となったシナリオについても幾つか取り扱う予定です。その際には作品の公開・入手時期等もきちんと明示したいと思います。
 最後になりましたが本リプレイを始めるきっかけを下さり、なおかつ素敵なCast素材をお借りした楽様(竜想月)に深い感謝を。
 

category: *Replay*

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