月霜の樹林

La bave du crapaud n'atteint pas la blanche colombe...

【書評】人生の秋を思う  

 本日は敬老の日、全国各地でご長寿を祝う催しが行われています。
 その一方で、我が国の老人福祉政策は他の先進国に比べて遅れていると言う指摘も度々有識者の間から出ておりますし、昨今では娘や嫁と言う立場の女性に介護の負担を強いる風潮も目立って参りました。
 閑話休題。そこで今回は、或る一人の女性が辿った人生の軌跡と関わる羽目になった冒険者達のお話を紹介したいと思います。
 
□ホーム、スイート、ホーム□(大根おろし炒め様)/対象Lv.3-5

 蒸し暑さが極まる晩夏の或る日、冒険者達にリューン清掃局から緊急の依頼が舞い込みます。その内容は独りの老女が暮らす家で消息を絶った局員の救出。翌日、改めて現場に向かった冒険者達が見たのは敷地の外にまで堆く積み上げられた大量のゴミの山でした。壮絶な悪臭に悩まされつつ「ゴミ屋敷」へと踏み込んだ冒険者達、しかし、屋敷の内部は外とは打って変わって整理整頓が行き届いた小奇麗なもの。床下から時折響く不気味な物音に悩まされながら、冒険者達は局員の行方を追いますが…。
 初登場ながら第17回鈍色の箱で堂々の三位入賞、公式ファンサイトの寝る前サクッとカードワース第8弾にも収録された、大根おろし炒め様の「ホーム、スイート、ホーム」は、現実でもしばしば取り沙汰される「ゴミ屋敷」問題をCardWirth向けに翻案した社会派シナリオの逸品です。夏の終わりの何処かアンニュイな雰囲気を終始漂わせつつも時にユーモアを交えながら、「ゴミ屋敷」で独り暮らす「おひとりさま」となった老婆の半生や周囲の人々の心情(野次馬根性や無関心)を鋭い視点で描き出しています。探索部分の演出も丁寧に作り込まれており、仕事の合間の冒険者達のやり取りでプレイヤーにも必要な情報がきちんと提示される様になっております。製作者様は以前、非常に個性的かつアグレッシブなリプレイを執筆された事もある方であり、僅かな文章だけで情景を想像させる表現力には脱帽致します。

 冒険者によって現実と向き合う事になってしまった「ゴミ屋敷」の主。残り少ない彼女の人生は今後どうなって行くのでしょうか?老婆が描き出した儚い幻想は我々が抱える心の闇、なのかも知れませんね…。

 ※入手先:公式Guild
 

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